2005年の冬、私は台湾に住む妹一家を訪ねました。
以下はそのとき書いた日記の抜粋です。
「私・・・引越しでもするんやろか」
巨大なスーツケースと重たい紙袋を見下ろして思わず呟いた。
今日から台湾へいくので、その荷物である。
これはもう、人生最大の荷物と言っていいかもしれない。
実は妹から「来るんやったら、ついでに持ってきて」と頼まれたリストがあったのだ。
それは、
・みりん
・料理酒
・ポン酢
・お好み焼き粉
・お好み焼きソース etc…
重いモノばっかりや!
しかも、止めを刺すのが「雛人形」。
お雛様ナシの3月なんて可哀想、という我が家の意向なのだが、
人形ばかりではなく、土台とか、屏風とか、小物とか、
いろいろあるのでまた大荷物。
しかも機内持ち込みときた。
とにかく重くて、
「何キロあるんだろう」
よっこらしょとスーツケースを持ち上げたとたん、腰がかる〜く
ぐぎ
と音をたてた。
・・・私、空港まで無事にたどり着けるんやろか・・・
来たぞ台湾!
・・・と言っても、私の気分はぜんぜん海外モードではない。
旅行モードですらない。
台湾へ来たのは、ただただ、妹や姪っ子に会いたかっただけ。
気分はせいぜい隣町だ。
昨夜、空港で出迎えてくれたとき、
1ヵ月ぶりに会う姪っ子は、とても恥ずかしがって、顔もろくに見せてくれなかった。
しばらくすると抱っこさせてくれたけど。
タクシーの中で、椿といっぱいあじゃりの話をした。
家へ着いたら、
「見て!見て!」
と新しいおもちゃを得意げに披露してくれた。
とてもハッピーな夜だった。
そんで今日から数日は台湾観光なわけだが。
首都・台北ではなく、高雄という地方都市なので、あまり観光する場所がない。
仕方が無いから伊勢丹デパートへ行ってみたら、屋上に遊園地があった。
古くて、さびれて、昭和40年代にタイムトリップしたような遊園地なのだが、とにかく
・・・この乗り物は、何。
怖すぎて誰も近寄れなかった。
今日は雨なので、近所のショッピングセンターへ買い物に。
しかし・・・。
あんまり、ショッピングセンターのポスターには見えないな。
どう見てもサーカスだろ。
ピエロが店内を練り歩いているので、椿は怯えて大号泣。
入ると果物とDVDが並んで売られてたし。
・・・まあ、そんなことはいいや。
私は食べ物を買いにきただけだ。
台湾は漢字の国だし、あちこちに日本語があふれているので困ることはない。
お菓子にしたってこのとおり、
おいしいらしい。
米の菓子らしい。
しかし「せいちな焼」って、何だろう。
「こガたえび + にしはず」
・・・小型エビは分かるんだけどさ。
・・・ろへろへ・・・。
レシートにも商品名「ろへろへ」って書いてあるし、
ひょっとしたら、私のほうが日本語知らないだけなのかもしれないと、
なんだか自信がなくなってしまった。
昨夜はランタン祭りを見に行きった。
川辺にずらりと提灯が灯る。
龍は炎を吹き、噴水は飛沫をあげ、夜空には花火がドーンと上がる。
屋台もいっぱい出るのでなかなかの人ごみだ。
何より露店をひやかして歩くのが楽しいのだが、見てもよくわからない物が多い。
見慣れない果物があり、
「メロンの仲間の果物だ」
といわれて一口食べてみると、またしても
激マズ!
風邪によく効く『葛根湯』の味だった。
他にも亀ゼリーとかコンニャクとか、
台湾の屋台にはやたらと体によさそうな物ばかりが並んでいた。
一日、観光にいそしんだ。
亀だらけの池とか。
ナントカ廟とか。
虎のお腹の中とか。
だけど、本当にオモシロイ物を目にするのは、
大抵の場合、観光地からは離れた場所なのだ。
それは夜の住宅街に忽然と現れた。
マンションを裏手、薄暗い裏小路だ。
なんのへんてつもない道端に仮設の舞台がつくられていた。
「お祭りだから、時々ショーが来るのよ。
素人みたいな歌手が歌いに来たりとか」
と妹が解説する。
小さな舞台ながら、音楽も照明もにぎやかなものではないか。
みんなでちょっと覗いてみることにした。
すると・・・。
拍手喝采を受けていたのは、ほとんどハダカのお姉さんだった。
魅惑的なお尻をアピールしながら踊り狂っている。
・・・私、ストリップショーって初めて見た。
時刻はまだ8時半。
まわりは普通の住宅地だから、観客の半分くらいは子連れのファミリーである。
3歳や5歳の子にお姉さんのお尻を見せてどうしろというのか。
ハダカのお姉さんが引っ込んで、
見るからにしょぼい男性歌手が舞台に登場すると、
オッサンもファミリーも観客はほとんど席を立ってしまった。
台湾はとても馴染みやすい国だ。
香港に比べてもあまり中国らしくない。
清潔で進んでいるし、人々の言動も理解しやすい、ワケの分かった国だと思っていた。
だけどこの夜のショーを見て、
やっぱり中華なお国なのだなあと思い知らされたのだった。
あれは観光をしていて、池のほとりを歩いていた時だった。
「なんかここ、ドブ臭くない?」
と誰かが言った。
すると妹が、それを即座に否定した。
「ドブ臭いんじゃない。
これは豆腐の臭いだよ!」
『臭豆腐』。
その名の通り腐った豆腐。
臭い豆腐である。
なにしろ友人は店から100m近く離れた地点で「ドブ臭い」と嗅ぎつけたのである。
この臭い、タダモノではない。
しかも(申し訳ないけれども)「うんこの臭い」に近い。
正直言って、たまらない。
味は・・・ハマる人にはハマるらしい。
義弟は酷い下痢を起こして病院に担ぎ込まれた。
なんという臭いだろう。
なんという凄い食べ物だろう。
私はちょっと感動した。
これを食べられたら、世界が広がるに違いない。
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だが、食べる勇気は遂に出なかった。