香港(2)・・・食べ物について


● 一日目のチャレンジ

香港へ行く夜のこと、機内で夕食が出たが、私は食べなかった。
着いてから晩ごはんにしようと企んでいたのである。
案の定、妹達はさっそく大衆食堂へ連れて行ってくれた。
とはいえ、メニューはちんぷんかんぷんだ。
中国語のできる義弟が通訳をかってでてくれたが、今度は彼の日本語が怪しくてよくわからない。
なにしろつい先日も、うなぎの蒲焼を見て、
 「あのウサギ、おいしそう」
とのたまった義弟なのである(Vちゃん、ごめん)。
てっとりばやく日本語メニューを持ってきてもらう。
すると、
 「レモンコーヒー」
なるものを見つけた。
・・・うーん、レモンコーヒー。
いかにも気持ち悪そうな代物じゃないか。
上等だ、飲んでやろうじゃないか。
一日目だから元気である。
チャレンジ精神も旺盛である。
飲んでしまった。
レモンコーヒーを。
後味、最悪だった。


● 学習した2日目

翌朝、妹とお粥を食べに入ったつもりの店で、なぜかお粥がおいていなかった。
仕方がないから、飲み物だけ頼んで出よう。
 「あ、ここにもあるでレモンコーヒー」
 「・・・やめとく」
じゃあ何を飲もう。
 「ホットレモンコーラ」
またよく分からない代物だ。
妹によれば、店によってはおいしいらしい。
おばちゃんが、熱いよ熱いよ、気をつけて、といいながら持ってきてくれる。
沸騰させたコーラに、薄切りレモンが4枚ほど沈んでいる。
炭酸はほとんどない。
熱くて少ししか飲めなかったけど、そんなにまずくはなかったと思う。


● ペットボトル

のどが乾いてコンビニに入った。セブンイレブン。
あ、お茶がある、と思った。
見慣れた日本語のペットボトル「なごみ茶」。
・・・だが、待てよ。ここは香港。
と、手にとってチェックして正解。
蜂蜜入りだった。
蜂蜜入り緑茶って一体・・・。
じゃあこっちのお茶・・・梅入りだった。
こいつはどうだ・・・レモン入りだった。
まともな飲み物はないのかー!と悩んだ。


● ワンタンメン

一人で歩きまくっていた時のこと。
お昼ごはんに、本場のワンタンメンを食べたいと思った。
香港には粥麺の専門店がいくらでもある。

がやがやと騒がしく、下町のにおいのする店を選んで入った。
狭い店内はものすごい数の客でひしめいている。
壁一面に張り出されたメニューの中に、燦然と輝く
 『 虹彩雲呑麺 』。
雲呑=ワンタンである。
・・・虹彩なんて美しそうな名前のワンタンだ。期待はしないけど。
出てきたのは、丸いワンタンが三つ入った麺だった。
ワンタンは虹色じゃなかったけど、プリプリのエビが入って、なかなかいける味。
つゆもかなり旨い。
だが、肝心の麺が。
長いのだ。
おそろしく長いのだ。
どこまでも果てしなく続いており、ぜんぶが一本につながってるんじゃないかと疑いたくなる。
しかも硬いのだ。
噛み切ろうとしても歯のすきまに入ってなかなか切れず、かなり苦しんだ。
そういう種類の麺らしい。

ところで。
今回の私の使命は食べること、食べ物の写真を撮ることと、勝手に決めていた。
もちろん虹彩ワンタンメンも記念撮影しなければならない。
この・・・大賑わいの店内で。
私は一人ぼっちで、しかも地元民との相席だった。
フラッシュをたいて写真を撮るのが、どんなに恥ずかしかったか想像していただきたい。


● 飲茶

3日目の昼。
連れていかれたのは、『JUMBO』という超有名レストラン。
ここで、香港名物?の飲茶を食べる。
だが妹は、
 「オーストラリアの飲茶の方が安くておいしいよ」
と、見もフタもないことを教えてくれる。
結論から言えば・・・妹の言うとおりだった。
まずくはないのだが、
 「うおおおお、う・ま・い・ぜ〜!(byミスター味っ子)」
と火を吹くようなおいしさではなかった。(オーストラリアで食べ飲茶は感動的だった)

ところが、私のいないときに母と妹がまた違う店に飲茶を食べに行ったらしい。
 「それがねえ、おいしいのよ!あの店が一番おいしかった!」
と母は大満足で帰ってきたのである。
・・・ああ、食べそこねた。
かなり、くやしい。


● 北京ダック

さあ、今回のメインイベント、北京ダックの登場である。
ちょっと高級なレストラン。
こんがり焼けた肉が、次々とテーブルへ運ばれていくの横目で見ながら、わくわくするのを抑えられない。
ついに『それ』が自分達のところへ運ばれてきたとき、私は
 「わあ!これが噂の北京ダック」
と歓声をあげた。
が、母は反対に顔色を失い、黙り込んでいる。
きっと脳裏に
 「アヒル・・・アヒル・・・」
とエコーしていたに違いない。
あまりにもアヒルそのままだったから。
その母も、パリパリの皮がきれいに並べられて出てくると、さっきの青い顔はどこへやら、
 「おいしいわーおいしいわー」
と食べまくっていた。
現金なものである。
味はといえば、さすがにおいしかった。
うん、おいしかったんだ、最初の2口は。
3口食べたらもうおなかいっぱい。
あぶらっこくてたまらない。
  「当たり前でしょ!脂っこくないと北京ダックは作れないのよ!」
と妹に叱られた。


短い旅は無事に終わった。
スリや日本人プライスに悩まされることもなく。
久しぶりでほっこりできた旅だった。
・・・最後に、案内してくれた妹と、通訳してくれた義弟と、いい占いをくれた白い文鳥に、感謝。


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