アンジーは、ちょっと変わった猫だった。

母に言わせれば、「最初の事故で頭を打ったせい」らしい。

自分が猫だということを忘れている。

いや、人間だと思いこんでいるわけでもない。

どっちかというと、犬。

ひとなつこくてお人よし。

呼べば必ずニャアと応える。

買物に行くのが大好きだった。

家から5分のスーパーに、ひょこひょこ歩いてついて来ては、

自動扉の前で、私が出てくるのをじーっと待っている。

待ちくたびれると店に入ってきて、カゴの中に座っていたこともあったけど。

気まぐれを起こして一人で帰る、なんてことはまずなかった。

一度だけ、スーパーの行き道ではぐれたことがある。

子猫じゃあるまいし、勝手に帰ってくるだろうと放っていたら日が暮れた。

しかもその夜は嵐だった。

大雨、大風、雷まで鳴りひびいている。

さすがに心配になって探しにいくと、

スーパーの自動扉の前で座って待っていた。

とっくに閉店しているのに、まだ私が出てこないと思って待っていたらしい。

友達は犬ばっかりだ。

ご近所の犬たちとはたいてい知り合いだったようだ。

隣家のレトリバーとはとくに仲がよく、そのくせ家のとらとはケンカばかりしていた。

人間に対しては、ほんとに愛想がよかった。

怒ることもすねることもしなかった。

子供の相手でも嫌がらなかった。

たとえ尻尾をひっぱられても、振り向いて

「なんか用?」

と言うだけだった。

渡世術を心得ているのか、ただの馬鹿なのか。


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