アンジーは、ちょっと変わった猫だった。
母に言わせれば、「最初の事故で頭を打ったせい」らしい。
自分が猫だということを忘れている。
いや、人間だと思いこんでいるわけでもない。
どっちかというと、犬。
ひとなつこくてお人よし。
呼べば必ずニャアと応える。
★
買物に行くのが大好きだった。
家から5分のスーパーに、ひょこひょこ歩いてついて来ては、
自動扉の前で、私が出てくるのをじーっと待っている。
待ちくたびれると店に入ってきて、カゴの中に座っていたこともあったけど。
気まぐれを起こして一人で帰る、なんてことはまずなかった。
一度だけ、スーパーの行き道ではぐれたことがある。
子猫じゃあるまいし、勝手に帰ってくるだろうと放っていたら日が暮れた。
しかもその夜は嵐だった。
大雨、大風、雷まで鳴りひびいている。
さすがに心配になって探しにいくと、
スーパーの自動扉の前で座って待っていた。
とっくに閉店しているのに、まだ私が出てこないと思って待っていたらしい。
★
友達は犬ばっかりだ。
ご近所の犬たちとはたいてい知り合いだったようだ。
隣家のレトリバーとはとくに仲がよく、そのくせ家のとらとはケンカばかりしていた。
人間に対しては、ほんとに愛想がよかった。
怒ることもすねることもしなかった。
子供の相手でも嫌がらなかった。
たとえ尻尾をひっぱられても、振り向いて
「なんか用?」
と言うだけだった。
渡世術を心得ているのか、ただの馬鹿なのか。