こうして我家に最初の猫が棲みついたのが、1980年の秋。

それは、一番下の妹・優子がうまれた年だった。

とらと優子はいっしょに育った。

一人と一匹は鳴き声がよく似ていて、あれは優子が泣いているのだろうか、それとも猫だろうかと、

ときどき悩むほどだった。

とらはお姉さんぶって、優子を大事にした。

優子が病気のときは、部屋に入らないでガマンしていたし、

そうでないときは、優子の足元で眠った。

赤ん坊を見に来た客を怒って威嚇するということもあった。

とらは、狩人で勇ましい、人間に対しては狂暴な雌猫だった。

人に触られるのを極度に嫌い、なでようとすると血が出るくらい強くかみつく。

だが決して、優子には爪一本ふれることのないよう気をつけていた。

とらがまだ若かった頃、裏庭にコロという名の犬がいた。

心のやさしい穏やかな犬で、自分に近づきすぎない限り、とらはこの犬も可愛がった。

コロもとらを慕っていた。

雷の日など、コロを屋内に入れてやると、犬と猫はなんとなく見つめあったりして、

親しげにおしゃべりしていたようだ。

だがコロは、フィラリアであっけなく逝った。

しばらくの間、とらはひどく気を落とし、主をなくした犬小屋に寝ていた。

アンジーがやって来たときは、パニックを起こした。

家のなかに自分以外の猫がいるなんて許せない!

なにしろ、それまでとらは家でたった一匹の猫で、女王様扱いだったのだ。

しかもアンジーはもう赤ちゃんとは呼べない大きさになっていた。

2匹の猫が仲良くなるには時間がかかった。

たくさんケンカもしたが、なんとか共存できるようになってきた、その矢先、

アンジーは派手に逝ってしまった。

またしても若者に先に逝かれてしまったとらは、このあと一気に老け込んだ。

人を恋しがるようになり、あんなに嫌いだった抱っこをいやがらなくなった。

かみつくどころか、甘えるようになった。

ケンカ相手がいなくなって、さびしかったんだろう。


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