こうして我家に最初の猫が棲みついたのが、1980年の秋。
それは、一番下の妹・優子がうまれた年だった。
とらと優子はいっしょに育った。
一人と一匹は鳴き声がよく似ていて、あれは優子が泣いているのだろうか、それとも猫だろうかと、
ときどき悩むほどだった。
とらはお姉さんぶって、優子を大事にした。
優子が病気のときは、部屋に入らないでガマンしていたし、
そうでないときは、優子の足元で眠った。
赤ん坊を見に来た客を怒って威嚇するということもあった。
とらは、狩人で勇ましい、人間に対しては狂暴な雌猫だった。
人に触られるのを極度に嫌い、なでようとすると血が出るくらい強くかみつく。
だが決して、優子には爪一本ふれることのないよう気をつけていた。
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とらがまだ若かった頃、裏庭にコロという名の犬がいた。
心のやさしい穏やかな犬で、自分に近づきすぎない限り、とらはこの犬も可愛がった。
コロもとらを慕っていた。
雷の日など、コロを屋内に入れてやると、犬と猫はなんとなく見つめあったりして、
親しげにおしゃべりしていたようだ。
だがコロは、フィラリアであっけなく逝った。
しばらくの間、とらはひどく気を落とし、主をなくした犬小屋に寝ていた。
★
アンジーがやって来たときは、パニックを起こした。
家のなかに自分以外の猫がいるなんて許せない!
なにしろ、それまでとらは家でたった一匹の猫で、女王様扱いだったのだ。
しかもアンジーはもう赤ちゃんとは呼べない大きさになっていた。
2匹の猫が仲良くなるには時間がかかった。
たくさんケンカもしたが、なんとか共存できるようになってきた、その矢先、
アンジーは派手に逝ってしまった。
またしても若者に先に逝かれてしまったとらは、このあと一気に老け込んだ。
人を恋しがるようになり、あんなに嫌いだった抱っこをいやがらなくなった。
かみつくどころか、甘えるようになった。
ケンカ相手がいなくなって、さびしかったんだろう。