エジプト(2)


 ルクソールの文字たち


エジプトへ着いて最初の2日間はルクソールで過ごした。
有名な「王家の谷」のある町だ。
南北に流れるナイル川によりそって、豊かな緑地帯が細長く広がっているが、
そのすぐむこうは荒れ果てた砂漠。
サトウキビ畑の向こうは埃で白くかすみ、幻のような砂の断崖が立ちはだかっている。
その断崖に穿たれた穴に、ラムセスやツタンカーメンという名前の、大昔のファラオ達が眠っていたのだ。

墓の内部にはびっしりと絵や文字が描きこまれてあった。
墓だけではない。
ルクソール神殿、カルナック神殿、メディネト・ハブ神殿などを巡ったが、
これも壁といわず柱といわず、天井に至るまでびっしりと、絵や文字が描きこまれている。
もう、ぎゅうぎゅう詰め。
『古代エジプト人は空間恐怖症だった説』に一票入れたい。

凄いのは、これが絵だけでなく、文字だということだ。
「言葉」だということだ。
言葉は人の心を直接伝える道具である。
たとえ形式的な文書でも、天国へいくための呪文でも、その役割は変わらない。
文字は彼らの声を伝える。
すべてが砂に埋もれ、人々が死に絶えても、
石に刻まれた文字は話しつづけている。
時には大きな声で、時にはひそひそ声で、
古い古い彼らの言葉で、
昔むかしの彼らの声で、
低周波の超音波みたいに、耳には聞こえないけど確実に話し続けている。
3千年たった今でも尚。
そしてこれからも永遠に。

・・・じっと見ていると息苦しくなるので、こんな風に見てみた


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