ネパール・インド、付け足しの旅(6)・・牛の話


ヴァラナシは、なぜかやたらと牛が目につく町だった。
白牛は神の使いと言われ、大事にされている。
夜は繋がれているので、飼い主もいるにはいるのだろうが、昼間は自由に街中を闊歩しているのだ。

だいたいインドという国は、異様に人間が多く、どこの小路を曲がっても人の姿がある。
大通りは人で溢れ、車で渋滞し、その隙を縫ってバイクが走る。
人・人・人・人、人の群れ。
そんな中、牛たちは実に悠々と暮らしているのだ。
どんな混雑したところでも、どーんと構え、人間などに我関せず。

実際、牛たちは町のどこにでもいる。
列車を待っていると、改札口からにゅうっと入ってきたり。
・・・牛君、どこへ旅するのだ君は。

バザールの辻や大渋滞している道路の中央分離帯で、ぐうぐう眠っていたり。
・・・なぜ、こんなやかましい所で寝ようと思うんだ君は。

また、川のほとりのぬれた階段で、足をふみはずして4,5段すべり落ちたり。
・・・牛も、コケるんだ・・・。

時には八百屋の目を盗み、通りがかりのフリをして、こっそりカリフラワーを失敬したりもする。
店番の少年にひっぱたかれても、いつのまにか戻ってきていて、今度はトマトをかじってみる。
・・・ほかにも八百屋はいっぱいあるのに。
絶対あの子をからかってるやろ。
しまいには棍棒で追い回されている、聖なる白い牛。

インド人は何を考えているか分からないと言われるけど、インドの牛も、やっぱり何を考えているか分からない。


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